茨木市は2015年のJR茨木駅東口駅前広場再整備から、のこぎりの刃状のギザギザにした(歩道に三角形の切り込みをいれた)バス停を設置している。11月末までバリアフリー化工事中のJR茨木駅西口バスターミナルでも、新設するバス乗り場を同様の形状にする。
交通関係の専門用語で「新型バスベイ」といわれる形状で、近年では東京駅の八重洲バスターミナルなど全国で導入が進んでいる。これは国土交通省が「道路の移動円滑化整備ガイドライン」で新たなバス停の形状として紹介しているためだ。
ガイドラインではバス停の形状を大きく3つに分類している。(1)ストレート型、(2)バスベイ型、(3)テラス型だ。
ストレート型は道路の脇にバス停を設けるもので、ポストや上屋を設置するだけだ。バスが停車していると車線をふさぐため、後続車は乗降を待つか追い越すことになる。道路が狭く車線が片側1車線の場合は追い越すことができず、道路渋滞の原因となる。茨木市内では近鉄バスの花園東和園路線のJR総持寺新駅周辺、同バス水尾循環路線や京阪バスの茨木鮎川線などで道路渋滞を招いている。
歩道に充分な幅が確保できる場合はバスベイ型が採用される。歩道に台形の切込みを入れバス停を設置する。バスは車線から左に寄って切り込みに停車するため、バスが停車中でも車線は通行が可能になる。茨木市内でもさくら通り(田中町バス停、税務署前バス停など)などに設置されている。
バスベイ型にも欠点はある。周囲の環境の制約でバスベイの切り込みの幅が狭いと、正着するための幅寄せが難しくなる。正着とは歩道にぴったりと寄せてバスを停めて、車いすなどでも乗りやすくすることだ。
横浜国立大学大学院の論文でも、運行が遅れていると幅寄せの時間を省くためにバス運転士が正着を怠る傾向にあると指摘している。
しかし高齢化に対応するため国土交通省はガイドラインでバリアフリー化を推奨している。(3)のテラス型は歩道から道路にバス停を突き出すもので、正着しやすくするものだ。しかし車道を狭めてしまうことになり、バスが停車していなくてもボトルネックになるおそれがある。
そこでガイドラインでは新型バスベイが推奨されている。歩道に三角形の切り込みをつけることでバスを左斜め前方に向けて停車させて車線から離脱する。そして発車時には、大きく右へ出て車線に復帰する。
バスベイの切り込みの幅が狭くても設置できることから、JR茨木駅東西のバス停のように狭い場所に、通過用の車線を確保しながらより多くのバス停を設置することができる。
ただし新型バスベイにも欠点はある。右後方が見えにくくなるために、発車時に車線に復帰する際に後続車との接触事故が発生する可能性が指摘されている。また右への切り返し角度が急で運転士の負担が大きくなるともされている。
JR茨木駅西口もスペースに限りがあるため、リスクはあるものの新型バスベイが現実的な選択肢となりそうだ。