盛り上がり欠く選挙戦に市民は無関心


再出馬を表明した現職の木本保平氏(71)の再選が確実視されていた茨木市長選挙は、差出人不明の告発文書によって一気に情勢が変わった。

木本氏のおいが所有する不動産の固定資産税を滞納しているというもので、3月4日の市議会で朝田充市議(共産党)の追及に木本氏は事実を認めた。毎日放送などがローカルニュースでこれを報じた。

さらにこの不動産を担保に木本氏自身が借入れをおこなっていたこと、それを市条例に基づく資産報告から除外していたことなどが明らかになった。

かねてからごみ収集業務民間委託の入札をめぐって、参入条件を厳しくすることで木本氏の親族が経営する会社などが長年にわたって事実上独占してきたことも問題視されてきたこともあり、一気に木本氏離れの動きが広がった。

特に木本氏の支持母体で、自身も顧問を務めるおおさか維新の会茨木支部は実質的に分裂状態となった。同党所属の足立康史衆院議員は木本氏に説明を求めるなど、反木本の動きを鮮明にした。

週明けにはおおさか維新の会茨木支部として木本氏支持を取りやめ、代わりの候補探しに動き始めた。しかし木本氏を支持する市議も多く、代わりの独自候補を擁立することができずに、自主投票を決定した。

木本氏の不祥事をうけて自民党などは対抗馬探しの動きを加速。茨木青年会議所でも活動していた茨木市出身の福岡洋一弁護士(40)を擁立することになった。無所属を標榜していたが自民党の占部走馬府議は自らの事務所を選挙事務所に提供するなど、茨木青年会議所メンバーとも連携して全面的にバックアップした。

この動きにおおさか維新の会所属の松本利明府議や民進党の森みどり前府議も追随。さらに前回2012年の市長選で敗れた桂睦子市議ら諸派や無所属市議も相次いで福岡氏支持を明らかにした。足立康史議員も中立を標榜していたが、福岡陣営にも為書きを寄せた。さらに福岡陣営の選挙はがきの推薦人にも名を連ねた。

しかしその一方で、民進党やおおさか維新の会の内部対立が広がった。大野ちか子市議(おおさか維新の会)など茨木青年会議所の役員にも木本支持派がいることから青年会議所も全面的に福岡氏支持でまとまりきれなかった。

共産党は元府職員で同党系の市民団体役員の末武和美氏(69)を擁立。共産党市議団のほか無所属の山下慶喜市議ら数名が支持に回った。

結果的にこの選挙は木本派と反木本派の感情的対立に過ぎなかったといえるであろう。共産党を除くとどの組織も一枚岩とは言えず、一般の市民からみえないところで展開された選挙だった。

福岡陣営はSNS等でポスターが500枚破られたと訴え、張り込みで犯人を捕まえたとしている。その犯人は対立陣営の運動員だったとしているが真偽のほどは明らかでない。選挙違反事案のため、これから公表される可能性がある。またSNS上では木本氏と足立議員が激しくやりあう場面もあった。

本来現職市長のスキャンダルに新人弁護士が挑むという構図は盛り上がるはずである。しかし各支援団体が股裂き状態になっていた上に、公にされるべき議論がほとんど表に出なかったことで一般の市民の関心は低かった。福岡氏というある意味落下傘ともいえる候補の知名度の低さも盛り上がりに欠けた要因といえよう。

1期4年の木本市政で駅前や市南部開発、市民会館建て替えなど多くの開発案件が浮上している。これらを推進するのか、またどのように軌道修正するのかを問われるべき選挙だった。それが政党や組織のパワーバランスで市民不在のまま議論が深まらなかったツケは大きい。

また内部分裂状態となったおおさか維新の会茨木支部や茨木青年会議所などには大きなシコリが残る。今後さまざまところで影響が出てくることになるだろう。

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